フィンボスとカルーは、同じ南アフリカに存在しますが、生態学的にはまったく異なる植生(バイオーム)です。
オトンナ(Othonna)はしばしば「フィンボス原産」と説明されますが、正確にはカルー(特にサキュレント・カルー)との関係がより深い植物属です。
本記事では、
- フィンボスとカルーの定義の違い
- 気候・植生・生態戦略の決定的差異
- なぜ混同されやすいのか
- オトンナはどちらに属するのか
- 国際的評価・保護の違い
を、一次情報と公的資料に基づいて整理します。
フィンボスのおさらい|ケープ植物区系を代表する植生
フィンボスとは何か(公式定義)
フィンボス(Fynbos)とは、南アフリカ共和国南西部に広がる
ケープ植物区系 を代表する自然植生です。
この地域は、世界に6つしか存在しない植物区系(Floristic Kingdom)のひとつとして国際的に認められています。
フィンボスの基本的特徴
- 分布面積:南アフリカ国土の約0.5%
- 植物種数:約9,000種以上
- 固有種率:約70%
- 主体:低木性・非多肉植物
面積あたりの植物多様性は世界最高水準

カルーとは何か?|南アフリカ内陸部の乾燥地植生
カルー(Karoo)の定義
カルー(Karoo)とは、南アフリカ内陸部に広がる
半乾燥〜乾燥地域の総称です。
カルーは単一の植生ではなく、複数の生態区分を含みます。
主なカルーの区分
- サキュレント・カルー
- Nama Karoo(ナマ・カルー)
このうち、多肉植物と深く関係するのがサキュレント・カルーです。
サキュレント・カルーの特徴
- 世界有数の多肉植物多様性
- 冬雨型だが降水量は少ない
- 多肉植物が景観の主体
フィンボスとカルーの決定的違い|生態学的比較
一目で分かる違い(比較表)
| 項目 | フィンボス | カルー(サキュレント・カルー) |
|---|---|---|
| 生態区分 | 植物区系を代表する植生 | 乾燥地植生 |
| 気候 | 地中海性・冬雨型 | 半乾燥〜乾燥・冬雨型 |
| 降水量 | 比較的多い | 非常に少ない |
| 土壌 | 極度の貧栄養(リン欠乏) | 鉱物質・乾燥 |
| 主構成植物 | 低木・非多肉 | 多肉植物 |
| 火災 | 周期的に発生 | ほぼ発生しない |
多肉植物が主体かどうかが最大の違い
なぜフィンボスとカルーは混同されてしまうのか
理由① 地理的に隣接している
- フィンボス:沿岸部・山地
- カルー:その内陸側
地図上で連続して見える
理由② どちらも「冬雨型気候」
両者とも冬に降雨が集中するため、
- 冬成長型植物
- 夏休眠型植物
が共通して見られます。
「同じ気候=同じ植生」という誤解が生じやすい
オトンナはどちらに属する?|正確な位置づけ
結論:オトンナはカルー寄り
オトンナ(Othonna)はフィンボス構成植物ではありません。
理由
- フィンボス:低木中心・非多肉が主体
- オトンナ:キク科の多肉植物属
生態的な本来の立ち位置
オトンナの多くは、
- サキュレント・カルー
- 半乾燥地の岩場・斜面
といった多肉植物優占環境に適応しています。
なぜ「フィンボス原産」と言われがちか
- 分布域がケープ植物区系と重なる
- 冬成長型という共通点
- 園芸分野での簡略化表現
生態学的にはカルー側の植物
国際的評価の違い|保全対象としての位置づけ
フィンボスの国際評価
フィンボスを含むケープ植物区系は、
UNESCO世界自然遺産に登録されています。
登録理由(公式)
- 極めて高い固有種率
- 進化研究上の重要性
- 気候変動への脆弱性
サキュレント・カルーの評価
- 世界有数の多肉植物多様性地域
- 国際的に「生物多様性ホットスポット」と評価
- 研究・保全対象として注目度が高い
まとめ|フィンボスとカルーを正しく区別する
- フィンボスとカルーは別の植生
- フィンボス:低木・非多肉中心
- カルー:多肉植物中心の乾燥地植生
- 冬雨型という共通点が混同の原因
- オトンナはカルー側の植物
この理解は、
多肉植物の原生地理解・正しい栽培管理・情報発信の信頼性に直結します。


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